2016年5月21日

 東京都美術館で、「生誕300年記念 若沖展」を鑑賞(見学)した。
 

  「釈迦三尊像」の「紅葉小禽図」の裏側から別の部屋への通路が続く・・・・。1階のフロア(地下1階から入るので、その上層階に当たる)から更にエスカレータで、上の階に昇る。1階は、かつての相国寺の6月17日の法要、「観音懺法」を再現し、中心に 「釈迦三尊像」を配置し、その左右に、「対」となっている「動植綵絵」の展示だけであった。

 2階(感覚では3階)の展示室に入る。と入ってすぐ右側のガラスの平展示ケースに人だかりが・・・。「なんだなんだ??」と展示物を見ると、ガラスケースの端の壁の作品名表示には「重要文化財 菜虫譜」とある。
 (この記事で「虫」の字は、現代字体で表記する。)

 「重要文化財」は赤い文字での表示である。
 本当に巻物の冒頭に「菜虫譜」と大きい文字で書かかれている。タイトルが付いているのだ。襖絵にしても、掛け軸の絵にしても虎が描いてあるから「虎図」、小鳥が画中にあるから「××小禽図」のように後世、名付けられた作品とは対照をなす、ということか。
 ガラスケース最前列は混雑しているので、後ろから横にカニ歩きして鑑賞する(笑)。私の後ろや両隣り、周囲は人で、もみくちゃである。最前列の人の合間から見ると、「菜虫譜」の左横から、野菜が右に向かって描かれている。真ん中の部分が、写真でもおなじみのように一番有名なキノコが大きく描かれている場面。青物問屋の主人であった若沖がそのまんま野菜を描いた巻物画。
 しかし、キノコから右(つまり、巻物の展開場面の先)は、ガラリと変わる。池や庭など京の郊外のどこかの沼沢地や原っぱの風景を描いたシーンを思わせる。先の「野菜」の絵は、自分の店の商品を描写したと思わせる、いわば「屋内」のシーンであるが、まるでワープしたかのように「屋外」の光景が広がる。
 そこには、虫がいて草が生えている。草は青々とした生命感を感じさせるものでは無い・・・・。草の葉には、穴が開いているか、枯れているようで、(テレビで紹介していた、西福寺の襖絵の裏の)「蓮池図」の葉の様子と共通する。虫は、クワガタ、トノサマ?バッタ、ムカデ、カマキリ、セミなど、ごくありふれた現代の私達でも見ることができる種類だ。池の周囲では、蝶が舞っている。水面の描写では、水の生物がいる。タニシやオタマジャクシまでいるし、カエルが跳ねている。ザリガニ?までいる。水面の中心にいる一部が赤い胴体をしたウナギのような生き物は何?。ドジョウでは無いし、分からない・・・。人間がいない、虫と両生類の楽園を思わせる。
 巻物の最後に再び野菜が登場する。根菜の葉は、描いてあるが人間が主に食べる部分はほとんど土の埋もれているようだ。最後に描いてあるのはカボチャだろうか。
 その手前、池のほとりには、「擬人化」されたカエルが一匹いる。カエルのたたずまいと「目玉」が人間のようだ・・・。どこか、現代のアニメを思わせる。「ど根性ガエル」のようだ。(世代が分かるかな・・・・(笑)。)
 巻の末尾には、瓜を半分に切った「面」の所に、若沖の書付と落款がある。「・・・七十七・・・画」とある。若沖の最晩年、数え77のときの画であることが分かる。
 展示リストにある若沖の年賦によると、この頃、京の「天明の大火」で焼け出されて大阪に避難したとある。避難中に描かれたものだろうか・・・・・。巻物の後半部分は、火事で家財などを失った若沖や家族の心境を反映しているのではないか・・・。人間のいない「虫達の世界」を描くことによって。人間の意思とは関係なく、変わらずそこにある虫や水辺の生き物の様子を見て・・・・・。
 擬人化したカエルといい、「鳥獣戯画」との共通性も感じた。
 この「菜虫譜」、最初は二列目で、ぶつからないように人をよけて歩きながら見た後、もう一度巻首の部分に戻り、巻物の途中、部分部分、ピンポイントで最前列への隙間を見つけて、うまく潜り込み(笑)、鑑賞をした。

 ↓  展覧会パンフレットより。「菜虫譜」がバンフの下部に載っていた。

IMG_4062

 
 ↓  展覧会パンフレットより。「菜虫譜」の後半部が載っていた。
    野菜の断面に「・・・七十七・・・」とあった。

IMG_4061



 次の展示に。と、通路の右の壁に一枚の絵が展示されている。「野菜が真ん中にある涅槃図」だった。「大根涅槃図」というべきなのかな(笑)。
 紙本墨書であり、白黒の絵。展覧会パンフレッにも写真が掲載されている有名な画であるが、不思議なことに足を止めて、見入る人は少ない・・・・・。音声ガイドの対象外なのかな・・・。
 先にも書いたが作品の横には説明文が一切無いため、あらかじめ予習していないとボクのような素人には全く分からず、通り過ぎてしまう・・・・。
 個人蔵「百犬図」は、この「野菜の涅槃図」と入れ替わりの展示であった。

展覧会パンフレットより ↓ 

IMG_4060