2016年7月17日 日曜日 
 
  長野県、諏訪湖畔にあるサンリツ服部美術館の特別企画展「禅宗と茶の湯の美」。国宝の可翁筆「寒山図」が特別公開されている。 

  可翁筆「寒山図」の修復の模様が、写真パネルで解説されていた。展示室のガラスケースとは反対側の壁に掲示されている。作品の裏打ちの紙をはがして、新しい裏紙を貼り付けしている。作業をしている様子の写真がある。若い女性が作業をしている様子が写っている。筆を使って、表面の汚れを落としていっている。作品の表面も修復前は、どこか黒ずんで、水墨の輪郭が分からなくなっているが、修復後は輪郭線がはっきりとしている。
 寒山のお顔の横も以前は、赤っぽい複数の線のような汚れがあったように見えるが、修復後はきれいに落ちて、画面がすっきりしている。数年間はかかったであろう、修復を経て今回の「初公開」となったことが分かった。
 修復は所蔵者が支出し、国も補助金を支出しているのだろうが、いくらかかったのか、企業や個人の寄付金を募って修復したのか、修復機関はどこであったのか、何人で修復を担当したのか、までは解説が無かった。
 このたびの「特別出品」はある日突然、「初公開」と称して行われたような感じなので、尚更謎を呼ぶ。

 可翁筆「寒山図」の真正面の壁側に看視員のイスがあって、警備員か美術館の人でろあうスーツ姿の男性が看視係となっている。
 ただし、先程じっと単眼鏡を見たまま作品の前で動かなかった「おっちゃん」に大しては、看視員は何も言わなかったが・・・・。すいているので、その人が陣取っても真正面から見れないだけであって、鑑賞に支障をきたすものでは無いからだ。
 警備員のイスのうしろの壁には、美術館の開館に寄せての故・服部一郎氏夫人のことばの掲示があった。開館以来、常時展示室内に掲示されているのであろう。
 「・・・・・・・・亡き夫、服部一郎は、出張のたびに訪れるここ諏訪の風景と自然を愛していました・・・・このたび、亡き夫の・・・・」というような挨拶文である。
 創業家とはいえ、服部家の生活基盤は創業の地で主力工場のある諏訪ではなく、すでに東京であり、経営者として諏訪に出張していたということだろう。

  第二展示室には、その他茶道具や陶磁器などの展示があった。美術館の展示室は、すべて2階。高床式のような造りだ。

 1階入口のロビーに降りた。販売コーナーには、美術館の図録や絵葉書などが販売されている。が、国宝の茶碗の絵葉書はあるが、「国宝 寒山図」の絵葉書は「7月下旬入荷予定」の表示があり、私の訪問時には、販売されててなかった・・・・。
 図録までは詳しく見なかったので、この国宝絵画の来歴や所蔵者は分からなかった。ただ、図録に詳細が記載されてるかは、分からない。
 作品前の解説文にも載っていなかったが「国宝 寒山図」の所有者はここの美術館の所有ではなく、故・服部一郎氏の親族の所有だろう。しかも故人の夫人や子女ではなく、一族のうち個人の誰かではないだろうか。
 
 後日見た、文化庁のサイトからリンクできる国宝サーチのウェブサイトによると国宝指定は昭和27年。所在地、所有者は「東京都 個人蔵」とある。やはり、本美術館の所有ではない。服部セイコーグループ創業者の子孫で現在もグループ企業の大株主である個人の所有なのであろう。よって、創業の故地、一族の代表者であった故・一郎氏の没後30周年と(恐らく、数年に渡る)修復を終わったことを機会とし、故・一郎氏の収集美術品を所蔵している諏訪の本美術館での公開となったのであろう。

↓ サンリツ服部美術館の前の道路。空がどんよーりしている。

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 ↓ サンリツ服部美術館(以下、主に「本美術館」と書く。)の1階、外側にある入口スロープ。パリアーフリーになっている。(上の写真とほぼ同じアングル)
  右の桜並木(葉桜だが・・)の向こう側が諏訪湖だ。湖畔道路は渋滞をしている。
  並木の向こうに諏訪湖「間欠泉センター」の建物が見える。

 が、美術館の駐車場はご覧のようにすいている。渋滞している車列の中かから、見学に入って来ないのが不思議なくらいだ。 国宝「寒山図」は、かつて切手の図案になったとはいえ、知名度からいうと低い。よって、その「初公開」といつてもあまり話題にならなかったのかも・・・。

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 湖畔の駐車場は、すべて満車で駐車する余地が無かった。サンリツ服部美術館に来る途中、湖畔近くで信号待ちしていると、目の前をアノ「水陸両用車」がお客さんを乗せて、通過して行った。湖畔の停泊場の広場に入って行ったようだった。すぐに、ドボンと湖に入るのだろう。オープンバスのように屋根が無かった。満席のようたっ゛た。デレビでも紹介されているので、おなじみですね(笑)。
 反対にここサンリツ服部美術館がガラガラなのは寂しい限り。せっかくの貴重な国宝の特別公開だというのに。
 道路を渡ると諏訪湖畔の桜並木のある土手なのだが、湖畔には行かなかった。この付近(上諏訪)で諏訪湖畔に来るのは、小学生の時以来かも。昭和60年代のことだった(笑)。今から30年近く前のことになる。
 先程も美術館の2階から見たところ、湖水には「アオコ」(藻)が増殖しているようだった。当時購読していた「小学〇年生」で「諏訪湖の富栄養化による藻の繁殖」読んだ記憶があって、実際に見て「ああ、藻が繁殖していて緑色の水に濁っているな。」と感じた。今回、大人(というか、すっかり歳を重ねてオッサン)になってから改めて見たが、改善はされているようだが、遠目に見ても、藻が発生して水中に漂っている感じだった。
 ただ、当時は道路はたの駐車場のような所から水面を眺めたが、今回着てみて、道路、歩道は整備され、温泉ホテルの立派な建物が並び、湖畔には桜の並木もある。美術館なども立ち並び、ずいぶんと変わったようだ。(ほとんど、覚えていないが。)
 「間欠泉センター」にも行ったことがあるような気がするが、覚えていない・・・。他の記憶と混同しているかも知れない(苦笑)。
 サンリツ服部美術館の今回の展示は「服部一郎氏没後30年」を機会としているので、財団や美術館設立はその後のことだろう。従って私が小学生当時、訪れたとき、この美術館は開館していなかったと思われる。

 美術館を出て、車に乗り込む前、しばし周囲の風景を眺める。
 ↓ 美術館の敷地の北側。上諏訪の市街地と山々。

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↓ と、水が流れ出ていた。湧水かな?と思い、手を当ててみると「熱い!」。なんと、お湯だった。温泉が湧き出ている。(この付近のどこかにある源泉から引いているのだろうが。。。)。
 しかし、温度は40度くらいで、物すごく熱い訳では無いのでヤケドはしません(笑)。
 ここは、上諏訪の温泉街のはずれにある。電車で簡単に来れる標高750メートルの高原の街と温泉街だ。


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↓ 南側。高床の下側のパーキンク゛。向こうは諏訪湖。
  霞んでいて見えない。今年の梅雨明けは遅い。この三連休のうちに梅雨明けするかと思ったが、まだだ。
 その代り、湿度は高いものの涼しいのとは助かる。標高750メートルの高原地帯とはいえ、炎天下では暑いだろう。

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↓ 南側。高床の下側。向こうは諏訪湖。

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↓ 本美術館の建物の裏側から。細長い高床の建物。
  西隣は「北澤美術館」がある。ガイドブックには、たいてい「北澤美術館」は紹介されているが、ここ「サンリツ服部美術館」は地図のみの表示であることが多いようだ。
 知名度という点でも「サンリツ服部美術館」はもうひとつといったところか。同じく湖畔にある重要文化財指定の建物、片倉館は混雑していた。テレビで取り上げられたこともあるが・・・・。


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 ↓ 東側。お隣のタンクは「信州みそ」の工場だった。駐車場の敷地は広いが、車が全然停まっていない。


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 ↓ 二階の展示室の外観。東側の第二展示室。この中の中央壁側に国宝 可翁筆「寒山図」の展示があった。
  柱の上には、「ネズミ返し」がついていて、正倉院を思わせる造りだ。

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 再び、「高床式」の建物の下に停めた車に乗り込み、出発する。道路に出て、渋滞の車列の中に入り込む(笑)。
 先程通って来た諏訪湖畔の道を通るのだが、湖畔道路の「外回り」は渋滞しているので、途中で細い道に入り、上諏訪駅の前の道を通過。上諏訪駅横の踏切で中央線を渡り、国道20号に出た。
 次に「尖石遺跡」に向かう。茅野市に向かう道を途中で分かれて、山の方向に進むことになる。意外にも茅野市と諏訪は距離がある。茅野市までの国道20号線は、交通量が多くスピードが出ない。30分以上かかった。「尖石縄文考古館」を見学したが、閉館は16時30分と、30分も見ることが出来なかった。本美術館も早足で見たつもりだったが、諏訪湖畔の間欠泉センターは断念した。子供達も興味が無いらしい・・・・。そのためか分からないが、「尖石縄文考古館」の開館時間帯には間に合った(笑)。

 
 なお、サンリツ服部美術館で今回の特別企画展のチラシは置いていなかった。配布していないのか、配布終了したのかは、分からなかった。しかし、「尖石縄文考古館」には、サンリツ服部美術館の特別企画展「禅宗と茶の湯の美」、国宝 可翁筆「寒山図」特別公開のチラシが置いてあった(ラッキー)。
 美術館ではなく、別の文化施設などにおいているのですね(笑)。

 ↓ サンリツ服部美術館の特別企画展「禅宗と茶の湯の美」、国宝 可翁筆「寒山図」特別出品のチラシ
   (A4サイズ)、尖石縄文考古館で入手。

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 ↓ サンリツ服部美術館の特別企画展「禅宗と茶の湯の美」の展示リスト。

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