2018年12月 鍋島 徴古館 特別展「幕末明治の鍋島家 ―大名から侯爵へ」 見学4(国宝 催馬楽譜 公開) 

  佐賀市 公益財団法人鍋島報效会 徴古館
 「徴古館」が登録博物館としての名称であるが、この記事では便宜上「鍋島 徴古館」とタイトルに記載する。

  一階展示室に戻る。入口の正面ガラスケースに展示されている国宝「催馬楽譜」を見る。その名の通り昔の音楽の「楽譜」のようだ。この前京都で見た陽明文庫の楽譜のようなものかなと思った。

 ここ徴古館の入口の扉は、二重になっていない。押し引き両方に開く木戸の扉方式なので、風に吹きさらしになると、開いてしまうのだ。この日は、曇天、冬の初めを思わせる寒い日である。風か゜ぴゅうーと吹くと本当に扉が開く・・・・。すぐ正面に国宝が展示してあるのに大丈夫かな?、と心配してしまう。

 徴古館のパンフレットによると、国宝「催馬楽譜」の公開は10年ぶりのことだという。
 伝宗尊親王筆、平安時代の作品。
 展示されている場面を見る。本のようになっていて、途中のある1ページが開いて展示されている。
 傍らに「催馬楽」と書いてある後世に制作されたと思われる表紙カバー本が立てて展示されている。

 「鷹子 

   安波川女知也・・・・」

 と書いてある。「鷹子」はタイトルである。歌のタイトルのようだ。改行して、続いて歌詞と思われる言葉が書いてある。意味が解説に書いてある。

 「鷹の子は、私がもらいましょう。公達殿よろしいか?」というような問いかけの歌詞だ。

 「たかのこを、現在の大津市付近の粟津の御地(御料地)にいる鶉を(自分の)ものにしてよいでしょうか?、という問いかけの歌。ちなみに、「鶉」も現在の漢字ではなく、万葉仮名でかいている。「宇津楽」のような優雅な漢字三文字だったかな?。


 次いで「道口」というタイトルの歌だった。

 「女」という文字は、「めしや」の「め」ような発音の文字として記されている。「鷹の子」の歌詞の中の文字「御地」(おんち)は「男×知」だったかな?。場所、地名を指す発音でも、万葉仮名の文字を使用して、現在の地名に近い漢字の文字を使用していない。だから、漢字を追っていっただけでは、本文なのか、地名なのか、判読が困難だ。

 文章中「知」の文字は「ち」と読ませている。「也」は、現在では「なり」という表記で使用すると思うが、そのまんま「や」と読ませているようだ。
 これらの女、知、也の文字は文中、「鷹の子」「道口」の両方の歌の歌詞にも多様されていた。文章には現在の大津市粟津を流れる川の名称も記載されていたと記憶する。さすがに「安治川」のように、末尾が「川」の地名、つまり「かわ」は「川」と現代と同じく文字を用いてた。
 「万葉仮名を使用している・・・」と説明にも書いてある。

 特別展の案内チラシに画像の掲載がある場面では、「ない」ところの展示だった。↓
 展示場面はページ替えを定期に行っていたのかは、不明だ。


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 国宝「催馬楽譜」は「直大によって もたらされた。」と説明にある。元々、鍋島家の伝来ではなく、明治時代の当主、鍋島直大が集めたコレクションのひとつようだ。直大は、宮内省の式部官を長年務めたこともあり、雅楽などの音楽をこのんだそうである。宮中の儀式を司るため、日本古来の音楽に関する資料を収集する過程で「催馬楽譜」を入手したのだろう。 
 すると江戸時代までは、雅楽を司る公家が代々所蔵していたのだろうか?。展示の説明を見たところでは、書いていなかった。妻、栄子の実家、広橋家などの関係か、宮内省式部長(部署は式部寮?)での仕事での関係か?。
 展示場面の文字を見ると、大変丁寧に記している。しかし、親王の筆によるものではなく、書風が当時の代表的なものであり、大変な能書家によるものであることには、間違いないようだ。


 直大の式部官の辞令が展示されていたことは、既に書いた。直大は、明治時代に駐イタリア大使となってローマにわたっている。先の記事でも書いたが、(後妻の)栄子とは、(栄子が)イタリアに渡ってから結婚したと説明が書いてある。「・・・・男一人では、外交官という仕事がら支障があるため、早急に妻を求めた・・・・。」そうだ。最初の妻は イタリアで死亡した?かは、分からない。そこまで、詳しく説明は読まなかった。

 国宝を見た後、改めて二階への階段の登り口近いところに展示してあった、式部官の辞令を見る。イタリア大使から任を終えて帰国後、直大が任命されたときの辞令であった。

 
 「正三位 勲二等 侯爵 鍋島直大 任 式部長

 「天皇御璽」

 宮内大臣 従二位 勲一等 子爵 土方久元 奉」
 とある。
 現在の宮内庁では「式部官長」という役職がある。「式部職」のトップである。辞令は「式部長」なので現在とは官職名が少し異なる。

 一階の展示室を続いて見ていく。国宝の展示ケースの奥側は、ボンボニエールなどの展示がある。 

奥に向かって、左手のガラスケース内には、蒸気機関車の模型がある。大きい模型で、入った瞬間に目に入る、目立つ展示である。

特別展の案内チラシの拡大撮影画像。↓
この現物が展示してあった。


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