2017年4月2日 特別展「雪村-奇想の誕生-」 鑑賞3 東京芸術大学美術館
東京芸術大学美術館にやって来た。 三階から見学開始した。
三階の展示室の順路の最後には、大型の屏風絵があった。
「花鳥図屏風」 ミネアポリス美術館 所蔵
池にコイがいて、池のほとりに鳥がいる。一双なので、つまり2点ある。鳥はサギのようだ。鶴ではない。トキを思わせる優雅な表現だ。カモもいる。実に大きくリアルに水墨で表現している。右双だったか、どちらかの屏風にはコイが何匹も大きく描かれている。コイのウロコや開いた口、目までリアルに表現していて、グロイくらいだ(笑)。
やはり大きな屏風絵がある。重文指定の「花鳥図屏風」 大和文華館 所蔵
右双は梅の木と鳥が描かれていて春を表現している。左は夏だそう。夏らしく水辺を飛ぶ鳥が表現されている。(右から左に時間軸が流れていたと記憶する。)
「紙本墨画」の筈。展示リストには材質が描かれていないので、彩色か墨画か忘れてしまった。
↓ 特別展パンフレットの拡大。鳥が実にリアルに表現されている。
三階の展示はこれでおしまいです。続いて地下に下りました。エレベータで一気に地下まで。地下は、二室に分かれています。
一室は、主に雪村や光琳の絵画や関連資料で奥行のある展示室。別の部屋は、近代までの影響を受けた画家たちの作品の展示。
↓ 展示室の配置。展示リストの抜粋。
順番に見ていきます。
「第5章 三春時代 筆力衰えぬ晩年」
70歳を過ぎて三春に居を構えたそうだ。西暦でいうと1560年代かな。信長が京の都で覇権を唱えつつあった時期だろうが、都から遠く離れており、気候の厳しい北国の地では無縁だったのだろうか。
「金山寺図屏風」 笠間稲荷美術館 所蔵 生まれ故郷、かつての常陸の国にある美術館の所蔵。
お寺の建物の描写が壮大で古代中国の立派な楼閣のようだ。茶色のようなうすい彩色が施されている。金山寺は長江の中流にある島の寺だそう。「・・・実際には見ていない。雪舟の絵を見て、空想で描いた・・・」と説明文にあった。
雪村を尊敬していたといわれる 江戸時代の画家 尾形光琳。作品の模写もしていたそうだ。
重要文化財指定「小西家伝来 (尾形)光琳関係資料」には、「雪村」の刻印のある落款(石印)があるのだ。現物の展示がある。説明文によると「どのような経路か分からないが、光琳は雪村の石印を入手した。・・・・」とある。重要文化財指定「小西家伝来 (尾形)光琳関係資料」の点数は、数多くある。以前、文書などは根津美術館の国宝「杜若図屏風」も展示されていた「光琳デザインの秘密」展で見て、光琳の子が大阪の小西家に養子に入って、伝わったことを知った経緯がある。また京都国立博物館の「琳派展」でも同資料の展示品は見たことがあると記憶する。
地下の小さい方の部屋 「第6章 雪村を継ぐ者たち」
雪村に関する映像コーナーもあった。
「山水図」 鶴沢探真という作家の明治時代の作品 雪村の作品の原本を見て模写したようで、画中の描かれているものの寸法がほぼ一致しているそうだ。
狩野芳崖の作品もありました。江戸時代~明治時代の画家にも影響を与えていたのでした。
橋本雅邦の「雪景図」(山水画冊のうち)の展示がある。江戸狩野の二代目、常信が雪村の作品の影響を受けて、のこした作品の更に模写か雅邦が影響を受けて制作した作品と解説があったと記憶する。(詳細は忘れてしまった・・・。)
三春の雪村庵にある額は 西暦1658、明暦4年に制作されたそうで「・・・八十余年前に僧 雪村あり。いみなは周継・・・」と書いてあるとのこと。明暦の大火のあとのこと。昔ことを記録しておこう、という機運から作成したのではないか?。当時の人が80年以上も前に没した雪村を忘れず、顕彰していたことが分かる。
すると没年は西暦で1570年代ではなかったか。
4/23(日)までの前期の展示は、重要文化財 大和文華館所蔵 「呂洞賓図」が一番のメインであろう。
4/25から会期最終日5/21(日)までの後期の展示は、重要文化財 指定で、展示リストによると同じく大和文華館所蔵 の「自画像」であろう。展覧会のパンフレットには「自画像」の写真の掲載がある。後期展示なので、道理で探しても無かったはずだ(苦笑)。
自画像によると雪村自身は、痩せていて、目が鋭い。まじめで、どこか神経質そうな人物像が伝わってくる・・・・。画風と異なり、厳しい修行に耐えた「禅僧」という感じだ。
地下二階の展示室を見た後は、地上二階に行ってショップを通り、一階に階段を降り(エレベータではなく)、退出した。ショップを見ない人は、一階でエレベータを降りて出て行ってしまっていたが。
↓「雪村展」 の看板が出ている東京芸術大学美術館の入口。上の階のガラス窓が展望休憩室。
※ 大和文華館 今回の展覧会でも多数出品していた。特に前期と後期の作品のメインは同館の所蔵である。
大和文華館の所蔵品は、日本美術関連の展覧会では、一品、二品と出品数は少ないものの、出展される機会は多い。2014年10月から12月にかけての「日本国宝展」では、国宝「寝覚物語絵巻」も展示されていたし。行ったことは無いが気になる美術館です(笑)。
昨年4月、信貴山に行った際に、距離的に近いので見学してみようと思ったが、時間の関係で割愛した・・・・。奈良国立博物館にそのまま向かったのだった。
昨年、訪れようとしたときの国宝展示は「寝覚物語絵巻」だったと思う。毎年、3月から4月上旬に展示しているようだ。すると、私が「雪村展」を訪れたこの日も大和文華館では国宝「寝覚物語絵巻」が展示されていたと思う。